堀内貴文@論文読み

主に読んだ論文(主にHCI分野)をまとめるために活用します。

直感的ヒューマノイドロボット操縦手法の調査

社会をアシストするための「人型ロボット」の未来は、次の二つの方向性が考えられると思う:

  1. 完全自立型 - つまり、初期条件だけを人間が与えれば勝手に動いてくれるようなロボット
  2. ツール型 - つまり、人間の身体の一部としてパワーを増強する役割を持つロボット

ここでは「ツール型」のロボットについて、その操縦方法や関連領域(概念)についてまとめます。

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テレイグジスタンス

まずは定義から:

テレイグジスタンス(telexistance)とは、人間が、自分自身が存在する場所とは異なった場所に実質的に存在し、その場所で自在に行動するという人間の存在拡張の概念であり、また、それを可能とするための技術体系です。(https://tachilab.org/jp/about/telexistence.html

この概念は、舘暲(たち すすむ)教授(東京大学)によって1980年に提唱されたらしい。

医療用ロボットのダビンチや火の鳥はテレイグジスタンスの例だと思うし、また、VRChatやClusterで使うアバターなんかもテレイグジスタンス。つまりオペラーターとは反対側の末端にいる実態がフィジカルでもバーチャルでも「テレイグジスタンス」の概念にカバーされている。本質的には「人間そのものをユビキタスにしよう」とする考え方。また、実際の人間の能力を拡張することもでき、例えば赤外線センサーの情報を視覚情報に書き加えれば、暗闇の中でも見ることができる。このような概念を「augmented telexistence」と呼ぶ。現状では、視覚・聴覚に関する部分はかなり研究・社会実装が進んでいるが、触覚の部分には課題がまだまだ残されている。

また「相互テレイグジスタンス」もあり、これは周りからアバターであるロボットを見たときに、それに操縦者の存在を感じさせること、つまり、周りから見ても何が起こっているのかを直感的に理解できるような仕組みをデザインすることも注目のポイント。

今 普及している技術(テレイグジスタンスが完全ではない世界)では、リモートワークは情報の伝達に限られているけれど、テレイグジスタンスが実現して遠隔地にも物理的な身体の動作を伝達することができれば、肉体労働などもリモートワーク化することが可能となる。これに伴い、工場に実際に出社しなくても社員がリモートから出社することができるようになるので、地下の安い(が人が集まりにくい)場所に工場を建設しても十分に回していくことができるようになる、などが考えられる。工場は人型ロボットで埋め尽くされた光景になるけれど、それを操作しているのはどれも人間という、ロボットAIが働いているようなSFに見た目は似ているけれどロボットの動作原理は全く異なるような未来が想像できる。歳をとって肉体的なパワーが衰えている人であっても、アバターロボットの力の出力を増幅させれば、若い人と同じような肉体作業をすることも可能となる。

テレイグジスタンスは、デジタルの世界ではすでに現実になってるけど、物理世界で実現するためには、触覚の技術はもちろんのこと、物理的なロボットを導入するのにコストがかかりそう。

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 アールキューブ構想

R3 (Real-time Remote Robotics)、Rが3つで => Rの3乗 => "R cube" というネーミング。旧経済産業省で1994年に設置された。

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