堀内貴文@論文読み

主に読んだ論文(主にHCI分野)をまとめるために活用します。

Enhancing communication skills in persons with Neurodevelopmental Disorders using Collaborative Immersive Virtual Environments: the Social MatchUP case

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  • どんなもの?
    NDD (Neurodevelopental Disorder)を持つ子供のコミュニケーション能力と協調性を育成する手法として、VR空間でプレイする「Social MatchUP (Sorting Game)」というゲームを開発し、その効果を評価した。目標としては、NDDを持つ子供の協調性の向上をサポートすることと、そのような子供の言語能力を診ているセラピストのサポートとなる技術を開発すること。

  • 先行研究と比べてどこがすごい?
    子供のコミュニケーション能力を育むためにVRが使われる例は20年前から研究されてきたが、神経発達障害を持つ子供の教育のためにVRを使う試みは前例が少ない。従来のセラピー手法は、NDDの子供を飽きさせている、という現状も報告されている。こんな中、VRを使って子供に楽しさや驚きを感じさせながらエンゲージメントを高めることで、より効果的なセラピー効果をもたらすことを目指している。

  • 技術や手法のキモはどこ?
    スマホと簡易HMDでプレイできるアプリだということ(低い限界費用で普及させることができること)。また最大のキモは、VRと現実で同じ実験を行い、これらを比較した点。

  • どうやって有効だと検証した?
    Social MatchUPというVR上のゲームプラットフォームに「Sorting Game」というゲームを開発し、また同じゲームのリアルな空間バージョンも開発し、このゲームをNDDを持つ子供2グループにヴァーチャルとリアルそれぞれをプレイしてもらったところ、ヴァーチャル空間でのプライの方が子供達のコミュニケーションスキルをより育んでいるという結果が得られた。データの形式としては、リアルとヴァーチャルそれぞれを体験している最中の子供達の会話の長さ、単語を幾つ発したか、何回どもったか、何回話してが入れ替わったか、などの定量的な評価軸が設けられた。(体験を対象とする研究では定量的な評価が多いように感じていたけど、こういう定量的な評価軸だと客観的な評価がしやすいと思う。厳密には「どうしてこの評価軸が妥当なのか」の説明も必要?)

  • 議論はある?
    開発した手法により、この研究で対象としたターゲットについてはコミュニケーションにおけるセラピーの面で効果があることがわかった。アジアなど他の地域でも調査を行い、今回の効果が普遍的な物なのか文化に依存するのかを検証しようとしているらしい。

  • 次に読むべき論文は?
    Exploring the Potential of Speech-based Virtual Assistants in Mixed Reality Applications for People with Cognitive Disabilities